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人工知能(AI)活用の生コン品質判定システムを開発 會澤高圧

 會澤高圧コンクリート(本社苫小牧市、代表取締役社長:會澤 祥弘)とアイザワ技術研究所(札幌市)は、AI(人工知能)を用いた生コンクリートの品質判定技術を開発いたしました。3月に本技術を使ったスランプ判定システムを自社のプレキャスト製品工場に実装し、品質管理の高度化や一部自動化に着手いたします。実際に稼働する生コン製造工場に生コン品質に係るAIテクノロジーが実装されるのは国内で初めてとなります。当社では、大手ハウスメーカーなどと提携し、本技術を使った新たな生コン品質保証モデルの概念実証(Proof of Concept:PoC)を併行して進めてまいります。  当社は、2018年より、生コンを製造するバッチャープラント(BP)や生コンを現場に輸送するアジテータトラック等に独自開発のAI技術やIoTシステムを実装し、製造から荷卸し時、さらには硬化後のコンクリート品質までを瞬時に予測して必要なプラント制御を繰り返す自律型次世代コンクリートエンジニアリングシステム、通称「AICE」(AI Concrete Engineer)の開発を進めております。  スタッフの高齢化や労働生産人口の減少に伴い、今後、業界全体で後継者の育成やノウハウの継承が一段と難しくなるのは避けられないことから、AIを用いた自律型製造供給システムの開発を通じて、これまで以上に安定した質の高いコンクリートの供給を、“ひととAIの新たな協業”の形で実現したいと考えております。   写真1.オペレータ操作室 写真2.AIスランプ判定状況(ミキサ画像)  今回開発したのは、AIの深層学習(ディープラーニング)を利用し、①生コンの製造工程におけるミキサ内の練り混ぜ画像データ ②練り混ぜ後にコンクリートを一時的に貯留するホッパ内の画像データ ③コンクリート練り混ぜ中のミキサの音響データ、の3つから、生コンのスランプ(生コンの軟らかさや流動性の程度を示す重要指標値)を即座に判定する基盤技術で、開発中である「AICE」の頭脳部に相当します。  画像データが欠落するような過酷な使用環境でもスランプの判定を安定的に行えるよう、画像(Picture)と音響(Sonic)の双方のデータを補完的に使うのが特徴で、開発コードは「P/S neural」(P/Sニューラル)としました。画像データによる「P/Sニューラル」のスランプ判定正解率(実測値±2.5cm以内 ※JIS A 5308レディ―ミクストコンクリートが定める許容差)は99%以上と極めて高く、音響データの判定正解率についても同様の±2.5cm以内で94%以上を達成いたしました。   図1.P/S neural概念図  硬化前の生コンの軟らかさを表す指標値であるスランプは、生コンの打設性能を決定づける最も重要な品質項目のひとつ。工場では、機械制御による計量管理に加えて、ミキサ内の練り混ぜの様子を、オペレータがモニタで毎バッチ目視確認してスランプの安定化を図るなど、経験と勘が要求される世界です。  当社では、JISのスランプ許容差をさらに厳格化した±1.0cmの独自基準を導入し、判定正解率85%以上を目指して精度のさらなる向上に取り組んでおりますが、「P/Sニューラル」は±1.0cm基準下で、すでに目標値に近い80%を超える精度を記録するまでになっています。その判定能力は、ベテランの生コンエンジニアのスランプ目視能力をはるかに凌駕する水準に到達しており、本技術の普及は、品質のさらなる安定化と業務負荷の軽減につながるものと期待しております。   図2.スランプ判定正解率推移(ミキサー画像)  当社では、3月末をメドに、鵡川工場のコンクリート二次製品用バッチャープラントに「P/Sニューラル」を使ったスランプ判定システムを実装し、北海道新幹線の大型トンネル工事に使用するコンクリートセグメント用生コンなどの品質管理に使用する計画です。  本バッチャープラントの生コン供給によって製造されるコンクリート製品は年間13万5,000㌧に及びます。実機を使った大量の深層学習で判定精度のさらなる向上に努めるとともに、今後はP/Sニューラルを画像データと音響データを掛け合わせて、さらに精度高い判定結果を導き出す「マルチモーダルAI」へと進化させる計画です。   プレスリリース参考資料)  P/S neural 開発ストーリー  AIによりコンクリートのスランプを判定する取り組みは2018年から開始しました。  2018年はミキサ内のコンクリート練り混ぜ画像がどの配合に該当するかをAIで分類する基礎実験を実施し、モルタルを除くすべての配合を正しく分類することに成功しました。  その実験結果より、AIの画像認識技術は製造中のコンクリートのスランプを識別できる性能を有していることを確認でき、AIの画像認識技術によりスランプ値を導き出せる可能性を見出しました。  2019年からは、コンクリートのスランプを判定するAIの開発に取り組みました。画像認識エンジンは当社のAIエンジニアの判断により、Neural Network Console(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)を使用しております。  2018年の実験時はオペレータのアナログカメラ画像をAIの学習と判定に用いましたが、リアルタイムに判定することを目的として、ネットワークカメラを導入しました。  カメラの設置位置や撮影範囲の考察および照明の確保など撮影環境を整え、ネットワークカメラのデータを元にAIの学習と判定を開始しましたが最初は全く結果が伴わず、撮影範囲の変更なども試みましたが効果は表れませんでした。  また、既存のミキサやホッパに余分なスペースはなく、カメラの設置位置が限定されるため、コンクリート練り混ぜ始めの粉塵や練り混ぜ中に飛散するモルタル分などで画面が頻繁に汚れてしまうため防塵防汚装置を自作して対処したりしましたが、製造時の振動により画像がぶれることなど対処しきれない問題もありました。  最終的には、アナログカメラにエンコーダという分岐部材をとりつけることでアナログカメラをネットワークカメラ化する装置があることを知り、その装置の導入によりようやく安定して画像データを取得できるようになりました。  撮影環境の整備によりミキサ内やホッパ内の画像データを取得することには成功しましたが、AIの判定精度は向上しませんでした。  そのため、粉塵でコンクリートが見えにくい一部のデータを除外したり、練り終わり直前のミキサ内画像と貯留開始直後のホッパ内画像を学習や判定に用いるなど、画像を厳選することでデータの質の改善に取り組みました。  また、コンクリートの動きを特徴として捉える効果を期待して、連続した3枚の画像を学習や判定に用いるモデルの開発にも取り組みました。その結果、判定精度は徐々に向上していきました。   更なる判定精度向上を目指すためにAIのエンジニアや生コンのオペレータとの対話を重ねた結果、データの大半を占めるAE減水剤を用いた普通コンクリートと当時はデータが少なかった高性能AE減水剤を用いた高強度コンクリートとでは、ミキサ内で練り混ぜ中のコンクリートの見え方やAIの判定結果の傾向が異なることに気付きました。  普通コンクリートはスランプが大きくなると柔らかくなっているように見えますが、高強度コンクリートはスランプが大きくなると粘性が増しているように見えました。また、普通コンクリートより高強度コンクリートの方が表面のテカリが多く感じられました。  見え方が大きく異なる高強度コンクリートのデータが学習と判定のデータにわずかに存在することでAIのスランプ判定精度の向上を阻害している可能性があることを検証するため、高強度コンクリートのデータ量が増えるまでは一時的に学習と判定のデータから除外することにしました。  その結果、AIの判定精度が大幅に向上し、スランプ判定正解率はJIS A 5308レディ―ミクストコンクリートが定める許容差(実測値±2.5cm以内)で97.0%、許容差±1.0cm以内で83.6%を記録しました。  高強度コンクリートのデータを除外する前の判定正解率は許容差±2.5cm以内で79.5%、許容差±1.0cm以内で19.3%でしたので、見え方の違いやデータ量の偏りが判定精度に影響を与えていたことに気付いたのは大きな発見と言えます。  AIの判定精度の向上に一定の成果を得られたことを確信したため、2019年12月にはAIと熟練技術者によるスランプ判定対決を実施し、AIが見事勝利をおさめております。  2020年は、AIの画像認識技術によりコンクリートのスランプを判定する技術を実用化するために、複数工場の画像データをAIの学習と判定に用いました。  工場毎に設備や撮影環境が異なるため判定精度の低下が懸念されましたが、結果は単一工場の画像データを学習と判定に用いた2019年と遜色のない判定精度を有するモデルの開発に成功しました。判定正解率は許容差±2.5cm以内で95.8%、許容差±1.0cm以内で77.4%を記録しております。  また、複数工場からデータを取得することでデータ数が大幅に増加したため、普通コンクリートだけでなく高強度コンクリートのスランプも高精度に判定することが可能となりました。  その後、配合データの種類が増減することにより判定精度は多少変動しますが、現在の判定正解率は許容差±2.5cm以内で99%以上、許容差±1.0cm以内で80%程度を記録しております。  AIの画像認識技術を用いたスランプ判定の精度が向上する一方で、画像データに乱れが生じると著しく判定精度が低下するという問題も浮上しました。粉塵や水蒸気による曇りや照明不足による明度の低下など、画像データの異常をAIが識別して判定結果に反映できないことが原因です。  AIによるスランプ判定を実用化するためには、良好な画像を得られない状況下においてもスランプを高精度で判定する必要がありますが、画像認識技術のみでその問題を解決することは困難でした。  社内で検討した結果、画像が乱れた場合の補完技術として音響を利用する案が浮上し、ミキサで練り混ぜ中の音響からコンクリートのスランプを判定するAIの音響分類技術の基礎実験を実施しました。音響分類技術によるスランプ判定正解率は許容差±2.5cm以内で94.3%、許容差±1.0cmで81.4%を記録し、画像認識技術と同程度の判定精度を有していることを確認出来ました。  音響分類にはS-Kaleid(株式会社バーナードソフト)というAIを用いた音監視システムを、コンクリートのスランプ判定用に独自にカスタマイズしたシステムを使用しています。  AIの音響分類技術によるスランプ判定の基礎実験が成功したことをうけて、画像データが欠落するような過酷な使用環境でもスランプの判定を安定的に行えるよう、画像(Picture)と音響(Sonic)の双方のデータを補完的に使う構想を練り、開発コードは「P/S neural」(P/Sニューラル)としました。  現在は「P/Sニューラル」の実用化のため、JISのスランプ許容差をさらに厳格化した±1.0cmの独自基準を導入し、判定正解率85%以上を目指して精度のさらなる向上に取り組んでおります。  当社では、3月末をメドに、鵡川工場のコンクリート二次製品用バッチャープラントに「P/Sニューラル」を使ったスランプ判定システムを実装し、北海道新幹線の大型トンネル工事に使用するコンクリートセグメント用生コンなどの品質管理に使用する計画です。  本バッチャープラントの生コン供給によって製造されるコンクリート製品は年間13万5,000㌧に及びます。実機を使った大量の深層学習で判定精度のさらなる向上に努めるとともに、今後はP/Sニューラルを画像データと音響データを掛け合わせて、さらに精度高い判定結果を導き出す「マルチモーダルAI」へと進化させる計画です。

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AIと人間が共存する コンクリート産業の未来図

近日公開予定

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P/S neural 開発チーム"奮闘記"

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